ハリソンの歴史小説セオファーノ
車屋の黒はその後ご跛びっこになった。彼の光沢ある毛は漸々だんだん色が褪さめて抜けて来る。吾輩が琥珀こはくよりも美しいと評した彼の眼には眼脂めやにが一杯たまっている。ことに著るしく吾輩の注意を惹ひいたのは彼の元気の消沈とその体格の悪くなった事である。吾輩が例の茶園ちゃえんで彼に逢った最後の日、どうだと云って尋ねたら「いたちの最後屁さいごっぺと肴屋さかなやの天秤棒てんびんぼうには懲々こりごりだ」といった。
車屋の黒はその後ご跛びっこになった。彼の光沢ある毛は漸々だんだん色が褪さめて抜けて来る。吾輩が琥珀こはくよりも美しいと評した彼の眼には眼脂めやにが一杯たまっている。ことに著るしく吾輩の注意を惹ひいたのは彼の元気の消沈とその体格の悪くなった事である。吾輩が例の茶園ちゃえんで彼に逢った最後の日、どうだと云って尋ねたら「いたちの最後屁さいごっぺと肴屋さかなやの天秤棒てんびんぼうには懲々こりごりだ」といった。